こんにちは今木商事(イマキショウジ@imakisyoji)です。
今月も花園誌で「心揺さぶる!禅の名場面」描かせていただいております。
今月のテーマは「壁も柱も聴いている」です。
一人も聴く者がいないのに話をするのか?
今回のお話
戦後間もない頃、ある大きなホールで、当時の妙心寺派管長である山本玄峰(やまもとげんぽう)老師の講演会が開催されました。
しかし自分はほんの少しあいさつをしただけで、後は連れていった松原泰道師に話をまかせて舞台袖に引っ込んでしまったのです。
講演が終わって玄峰老師は泰道師を控室に呼びました。
「わしは目がよく見えないからわからなかったが、今日の聴衆はとても少なかったようだな」
泰道師が答えます。
「ええ台風が直撃しましたから。このホールは千人収容できるのですが、聴衆はたったの五人でした」
玄峰老師が続けます。
「だがあなたの話は千人の時も五人の時も少しも変わらない。えらいもんだ」
すると泰道師が
「はい。私はたとえ聴衆が一人でも話をします」
と返します。
そこですかさず玄峰老師が問いかけます。
「ではその一人もいないときはどうする?」
泰道師は苦笑しながらいいます。
「誰もいなければ、さすがに私も話をしません」
すると玄峰老師が鬼の形相になり泰道師を怒鳴りつけました。
「禅宗の坊さんなら誰がいなくても坐禅をする。お念仏の者は誰がいなくてもお念仏をする。あなたも誰がいなくても話をしろ」
そしてさらにこう続けました。
「しかし誰も聴いていないと思うなよ。壁も柱も聴いておるでな」
今回のお話は昭和の頃なのでだいぶ最近ですね。
松原泰道先生は2009年まで生きておられたそうです。
カレンダーの出る季節になりました。
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