今月も花園誌で「心揺さぶる!禅の名場面」描かせていただいております。
今月のテーマは「もう腹いっぱいだろう!」です。
腹いっぱい飲んできた極上の酒の意味とは?
今回のお話
曹山本寂(そうざん・ほんじゃく)禅師に清税(せいぜい)という僧がたずねました。
「私は食べることに困るほど貧しく、助けてくれる人も誰もいません。どうか何かお恵みをいただけませんか?」
これは何も清税が本当に生活に困って物乞いをしているというわけではありません。
(迷いも悟りも捨てきって何ものにもとらわれていない自分に、あなたは何か与えられますか?)
と暗に問いかけて曹山禅師の力量を試しているのでした。
しかし曹山禅師もその魂胆を見抜いていました。
禅師は清税にすかさずこう呼びかけます。
「税和尚さま」
すると清税は反射的にこう答えます。
「ハ…ハイ!」
禅師が続けます。
「極上の酒を腹いっぱい飲んできたのに、まだ飲みたいとはよく言ったものだね」
それを聞いて清税はハッとします。
「極上の酒をいっぱい飲んだ…つまりもう十分与えられてすっかり満たされているのにまだ足りないのか…といわれているのだ」
「税和尚」と問われて即座に「ハイ」と返事をした清税には、何ものにもとらわれない働きがあり、すでに満ち足りた心境に達しています。それなのにまだ足りないなんて言うのはおやめなさいと曹山禅師は清税をたしなめているのです。
玄侑宗久先生のご本いかがでしょうか。
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