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覆面マンガ家ですが質問ある?

漫画家・今木商事の公式ブログ|マンガ、電子書籍などについてコメントします

漫画における「ネーム」とはそもそも何か?初心者でもわかるようこの業界20年の覆面漫画家が教えてやんよ!お餅マンガもちょっと公開!

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こんにちは今木商事(イマキショウジ@imakisyoji)です。

漫画業界ではきわめて当たり前に使う用語「ネーム」。しかし一般の方々にとってはほとんど知られていないのではないか?と思い、改めて解説してみようと思います。また漫画家志望者の方にも参考になるよう私のネームの書き方をご紹介いたします。

同時にお餅マンガの冒頭も少しお見せします。

ネームとは漫画の設計図

ネームとは何でしょう?Wikipediaによれば

ネームとは、漫画を描く際、コマ割り、コマごとの構図、セリフ、キャラクターの配置などを大まかに表したもの。単に「コマ割」「ラフ・ネーム」、「ラフ」、「絵コンテ」などと呼ばれる場合もある。狭義においては、キャラの台詞を指して言う場合もある。

映画・ドラマでいう絵コンテに近いもので、物語を映像的に語る力が問われる。つまり漫画の設計図であり、実質この段階でどういう作品に出来上がるかのほとんどが決定している。

となっています。「ネームとは漫画制作の設計図」とはネームの説明によく使う言葉でたしかにこの通りです。しかし一般の人にはこれでもまだちょっとイメージしにくいのではないでしょうか。ドラマなどで原稿を描くシーンはよく出てきますが、ネームを考えるシーンが出てきにくいのはこのせいかもしれません。

私は「ネームは漫画の骨格を決める作業」と考えています。以下説明していきましょう。

なぜネームを書くのか?

お話の流れを決める

漫画を描かない人からすればネームなんてめんどくさいことせずに、いきなり原稿を描けばいいじゃないかと思うかもしれません。実際書かない人もいらっしゃるようです。しかし多くの漫画家はネームを書きます。

それはなぜなのか?

仮にネーム行程を省略していきなり原稿を描いたとします。お話を行き当たりばったりで作っていってお話のラストでうまくまとまらなかったら?

漫画は1ページの絵を仕上げるのに長い時間をかけて作られていますから描きなおすのも大変です。

また完成した後で途中に入れるいいアイデアを思いついたとしても後からは簡単に入れられないでしょう。

そんなわけで「ネーム」として簡単な絵でお話の流れを作っておいて「よしこれで大丈夫だ」となってから初めて原稿に入るのがとりあえず普通のやり方となっているわけです。

担当編集といっしょに作る

さらに現在の漫画制作だと担当編集さんと打ち合わせの後、ネームを作って編集の人に見せ、そこで修正をしてネームを完成させてから原稿に入るというのが多いです。

担当の人だとその漫画家の絵はよくわかっていますから簡単な絵でも完成品のイメージはできます。その上で編集さんの「ここはこうした方がいいんじゃないですか」とか「ここは削りましょう」とかの意見を入れつつ、漫画家はネームを完成させていきます。

この場合も原稿を完成させてからだと編集さんが「これはまずいな」と思うところがあっても容易には描きなおせませんがネームだと簡単にいじることができます。

そんなわけでネームは漫画制作に必要な工程となっているわけです。

どんな紙に書くのか?

一般の方や、漫画家になりたいがまだ何もわからないという人はネームをどんな紙に書くのかもわからないでしょう。実は私も他の漫画家さんがどんな紙にネームを書いているのか知りません(笑)ネームは作品制作の内輪の作業ですから漫画家本人と担当編集さんくらいしか見ないものです。

人によってやり方はさまざまなようですが私が使っているのはスーパーで売っているB5サイズの落書き帳です。

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簡単な絵を描くだけですから特に描きにくくなければ何でも良いです。ちなみに鉛筆で描きます。

私のネーム公開!

実際に見ないとなかなかイメージがつかめないと思うので特別に私のネームをあなただけにお見せします。

現在制作中のきんどうさんのお餅マンガ「輪廻転餅(りんねてんぺい)」のネームです。

kindou.hatenablog.com

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人によっていろいろなんですが私のネームはこれくらいのラフな感じです。もっとちゃんと書きこむ人もいらっしゃいますね。また新人の場合、担当編集さんも絵をイメージしにくいのでもう少し書いたほうが良いと思います。

これは本編2ページ目、主人公三木倫子が恋人望月天平の待つコーヒーショップに遅刻してやってくる場面です。

 ここで倫子と天平の人物、2人の関係などを紹介しているところです。このページは書いたままで特に悩みませんでしたが、変えようと思えばいくらでも変えられます。

たとえば最初は倫子のアップから始まっていますが、コーヒーショップの外観を描いた1コマから入るというパターンもありますね。

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読者にここはどこなのか?を知らせるために小さな背景から始めるのはよくある手法です。

 

また1コマ目をもう少しロングでとらえるのも良いかもしれません。

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漫画が始まったばかりで読者も登場人物を初めて見るわけですから、全身に近い絵を入れる方が親切ともいえますね。

 

ではなぜ今回私が以上のやり方をせずに倫子のアップから始めたかというと、これらの方法だとキャラクターのインパクトが縮小すると考えたからです。それよりもまずドカンとアップから入って、少々のわかりにくさの可能性より読者に与えるキャラクターの衝撃の方を優先したわけですね。

ネームは悩む

これらのほかにセリフはこれでいいのかとか構図とか話の流れとか調整しようとすればいくらでもできます。なので漫画家はネームに悩もうとすればいくらでも悩めます。できないときは1コマも書くことができないくらいです。私も最近やっとほんの少し自信が出てきたくらいで、最初の頃は何をどうしていいのかまったくわかりませんでした。

ネームはつきつめれば「自分は何がおもしろいと思っているのか?」を自分に問いかけるようなところがあり、あげくは「自分の信じるものは?」とか「自分とは?」とか大変なところまでいっちゃったりしてこうなると大変です。

私の最初の連載「プラモウォーズ」のときもネームをやっと仕上げて編集さんに会ったら「今木さんやせたんじゃないですか?」といわれたこともあります。

他の人は知りませんが私の場合ほとんどネームで苦しむというのはこんな感じでした。これを読んでいる中にもひょっとしたら同じような方がいらっしゃるかもしれません。

ネームを楽しむ

本来ネームは「一応ストーリーはできたけどちょっと盛り上がりに欠けるな。よしここをこうしよう」とか「ここにギャグを入れて楽しくしよう」とか「あれ、これだとページが足りないな…仕方ないこのエピソードを削ろう」とか建設的に行うべきだと思います。

今回の「輪廻転餅」ではやっとそんな感じになってきました。

どうしたらこうなれるのかとお教えしたいんですが、ネーム作業というのは非常に個人的な感性の問題だと思うので、なかなか伝えられません。

しかし私がどうしてこんなふうにネームを考えてこんなふうに書いたのかということは説明できると思うので「輪廻転餅」が完成した後改めて記事を書きたいと思います。

 

最後に先ほどのネームが原稿だとどうなったのかお見せして終わります。

 

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