こんにちは今木商事(イマキショウジ@imakisyoji)です。
昨年こんな本を読みました。
これは映画監督であり脚本家でありスクリプトドクターでもある三宅隆太さんが書かれた脚本の書き方の本です。マンガのストーリー作りの参考になるかなと思って読んでみたのですが、想像以上に示唆に富んだおもしろい内容でした。
以下簡単に内容紹介と感想をお話していきます。
物語の構造をシンプルに解明してくれる本!かなりマンガ作りの参考になった!
中級編の前には初級編があり
ところで中級編というからにはもちろん初級編もありました。
中級編の1年前に出ています。この初級編は、脚本の具体的な書き方にはあまり踏み込まず、後半は表題にもあるスクリプトドクターの説明が主な内容になっています。
ちなみにスクリプトドクターとはひとことでいうと「脚本のお医者さん」。
映画やテレビドラマなどの制作をする上で、脚本の書きなおしが何回も行われますが、その結果脚本自体がどこに向かえばいいのかわからなくなってしまって体調不良におちいってしまうことがあります。
そういった問題点を分析してアドバイスをしたりするお仕事だそうです。
スクリプトドクターのお話はとても興味深いものでしたが、私としては物語の作り方を俯瞰的・構造的にとらえる ような内容を読みたかったわけです。
そんなわけで続編を心待ちにしていたわけですが…今回の中級編は見事にそれに応える内容でした。
ストーリーの作り方って?
さてなぜ私がそんなに物語の作り方を知りたかったかというと、マンガ家を仮にも25年もやっていてはずかしい限りですが、いまだに私はマンガのストーリーの作り方がよくわからないからです。
えっ?じゃあお前は今までどうやってマンガを描いてきたのだ? と思われるでしょうが、それはその都度その都度どうにかこうにか対応してきたというしかありません。
何しろ私の学生の頃は今ほど指南書も多くなかったし(そういう本を読んだからストーリーを作れるというわけでもないと思いますが)、学校で教わるものでもないので、とにかく先人の作品を読んで見よう見まねで何とかかんとか…という感じです。
だから常に「これでいいのかなあ?」という疑問を頭に浮かべた状態でした。
例えるなら酢豚の作り方をよく知らない中華料理屋
酢豚という料理がありますね(私も大好きです)。
みなさんは酢豚の作り方をご存じでしょうか。よく知っている方もまるで知らない方もいらっしゃると思います。
ところでふだんあまり料理をしない人が、いきなり酢豚を作らなくてはいけないことになったとしたらどうでしょう。
「ええと酢豚か…当然豚肉を用意しなきゃな…酢も入れなきゃいけないよな…あと何かトロ~ッとしてた気がするぞ。あれはどうすればいいんだ?」
という具合に途方に暮れてしまうのではないでしょうか。もしこの人がこの状態で無謀にも中華料理屋をオープンさせたとしたらとんでもないことになりますね。
でも私のマンガ家生活ってまさにこんな感じでした。
「今自分が作っている酢豚(マンガ)はこれで正しいのだろうか?」と悩みに悩みつつの25年だったというわけです。
ひとまず安心
まあ25年も続けたのだから、さすがにそんなにまちがってはいないのだろうという自負はありましたが…。
本書は脚本を構造的に書くことが苦手な人に向けて書かれていますが、私は構造的に考えるのはむしろ好きで得意なほうです。本書を読んで自作をふりかえってみたんですが、大まかな構造に関してはそんなにはずれていなかったようです。
やっとひとまず安心できました。
肉づけをどうすれば?
私が苦手だったのは個々のエピソードのふくらましでした。
つまり大きな骨組みは作れるが、肉づけをどうしたらいいのかわからなかったのです。そのため私がネームを書いても、少ないページ数にしかならないのでした。
新人の人が初めてのマンガを描くと膨大なページ数になることが多いです。これはあれも描きたいこれも描きたいとつめこむためこうなってしまうのですが、私はそういう人とは逆なので、なぜあんなにたくさん描けるのか不思議なくらいでした。
このエピソードが続くと(想定している)読者が退屈するのではないか…という危惧が強かったのだと思います。
本書がとても役立った
ではそういった危惧は今はどうなったのかというと、かなり本書で解決しました。後半の「中間部を支えるサブプロットをつくる」がかなり参考になったからです。
出版処てんてるで連載中の拙作「こ☆すも」も本書を参考に最終回までの流れを考えました。そしてさらに今やっている「内巻伊達子編」も構成を考え直しました。
最近本作がよく更新されているのも自信を持って描き進めることができるようになったからです。自分でいうのも何ですがとてもおもしろくなっていると思うので、ぜひご覧ください。自分がずっと目指していたくだらない(とてもいい意味で)作品になってきていると思います。
きっかけはラジオで
三宅さんのことはラジオで知りました。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」という番組で何回か出演されていて、ソフトな語り口と映画に関する膨大な知識、論理的な話の仕方などとても魅力的で信用できる人物だなと感じていました。
この人が出される脚本の書き方の本なら読んでみたいなと思い購入した次第です。
マンガ家志望の人にはオススメ?
このブログは主にマンガ家志望の方が読まれることを想定して書いています。
この本とてもおもしろいし、内容もとても良いのでみなさんもぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
…と基本的には思うのですが、注意点がいくつかあります。
マンガと映画・テレビドラマ脚本の違い
本書で三宅さんも「脚本は、小説やマンガとはまったくの別物」と語ってらっしゃるとおり、マンガと脚本では性質がかなり違っています。
またそもそも「マンガでストーリー作りに凝ること自体がムダ」という考えもあって、これも一理あると思います。
そんなわけで、本書を読んでマンガ作りの参考にしようという方は、以上のことを頭に入れた上で読むようにしてください。
私は個人的に構成のしっかりしたお話のマンガが好きなので、脚本の構造を学ぶのは意味があると考えています。
初心者の方は混乱するかも?
マンガ家志望者の人は「マンガの描き方」的な本をつい読みたくなってしまうものです。私も若い頃そうだったからよくわかります。
しかし25年の経験からいうとやはり実際にやってみる以上の勉強はありません。
本書も私が悩みつつも何とか実作をやってきたからこそ「あっそうか!」と納得できた箇所も多かったと思います。
なのでこの本を初心者の方が読んでも今ひとつ理解できないところもあるかもしれませんが、あまり気にしないようにしてください。
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