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藤井昌浩さんとの思い出と「まいど君がゆく」引き継ぎのお知らせ

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こんにちは今木商事(イマキショウジ@imakisyoji)です。

昨年末、マンガ家の藤井昌浩さんが永眠いたしました。

私にとっては同じ釜の飯を食ったアシスタント修行の先輩であり、兄貴分のような存在でした。あまりに突然のことで今でも信じられないくらいです。

今回は藤井昌浩さんとの思い出と、藤井さんが最後に連載されていた「まいど君がゆく」を私が引き継ぐことになったのでそのことをお話したいと思います。

 

私の兄貴分藤井昌浩さん

初めての出会いは新人賞

藤井さんとの出会いは1988年までさかのぼります。当時私は漫画アクション双葉社)の新人賞に応募し、何とか佳作をいただいたのですが、そのとき優秀新人賞に輝いていたのが藤井さんでした。

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双葉社で簡単な表彰式があり、そのあと担当編集さんと初めてお会いしたのですが、そのとき同席されていたのが藤井さんでした。藤井さんも同じ担当さんだったのです。

藤井さんをご存じの方はよく知ってると思うのですが、巨体と顔半分を覆う濃いヒゲがトレードマークなんですね。

でもなぜかそのときはヒゲもなく、ダテメガネが印象的でした。

アシスタント先で再会

さて私がせっかく新人賞をとって、しかも編集さんから東京に来ないかとまでいわれていたのに、何となくグズグズして3年もたってしまっていた…というお話は以前書きました。

imaking.hatenablog.com

東京に行きたいと伝えると担当編集さんはアシスタント修行先を紹介してくれました。

そこが前回もちょっと書いたわが師匠国友やすゆきの仕事場「スタジオテールエンド」だったわけですが… 

ダブル?背徳の隣人? 1

ダブル?背徳の隣人? 1

 

 そこにドーン!という感じでいたのが藤井さんでした。

藤井さんは新人賞のあとすぐにアシスタント修行で「テールエンド」に入っていたんですね。だから3年くらいアシスタントの先輩にあたるわけです。

アシスタント初日でやってきた私に、藤井さんは自分で焼いた赤いウインナーをごちそうしてくれました。まだ東京に来たばかりで右も左もわからない状態でしたから、その 

心遣いがうれしかったです。

このころの藤井さんはトレードマークのヒゲをモシャモシャ生やし(剃ってもすぐ再生する)タンクトップに短パン、裸足でペタペタ歩くという独特の存在感をかもし出している人でした。

仕事にはきびしい面もありましたが、親切にいろいろ教えていただきました。

丸ペンは立てて使うと細い線が引けるよ」

というのは今でも忘れられないアドバイスです。

4コマまんが王国をいっしょに

先ほどの記事でも書いた、私にとっての「2度目のデビュー」であるゲームを題材にした4コママンガの話がわれわれアシスタントたちに来ました。

これをきっかけに私と藤井さんもたくさんゲーム4コマを描くことになるのですが、特に雑誌「コミックファミコン王国」は藤井さんが描いた「くにおくん熱血勝負!」が看板マンガだったといって良いと思います。

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このあと藤井さんも私もアシスタントをやめ、自分の仕事をやっていくことになるのですが、電話で話したりして付き合いは続いていました。

藤井さんはこのゲーム4コマがきっかけで知り合った高沢浩里さんとご結婚され、息子さんも生まれて幸せに暮らしていました。ところが…。

脳梗塞で入院

2005年藤井さんは突然脳梗塞になり入院されました。突然といってもあとから考えるとめまいや頭痛などいろいろ予兆はあったそうです。

藤井さんは昔気質のところがあって4日間ぶっ続けで徹夜して原稿を描いたりする人でした。生活も不摂生でしたから、どうもそのあたりが原因のようでした。

私も当時お見舞いに行きましたが、吐き気に苦しんでおられたのが見ていてつらかったです。

このときの体験を藤井さん自身がマンガでまとめた本が後に講談社から出ました。 

 退院後はお仕事続行

退院後、幸いにも障害は残らず快復され、お仕事をされていました。

何年か前、私がお家におじゃましたときもお元気そうでした。くわしくは聞いていませんが、不摂生な生活も改善されていたのではないでしょうか。

元々かなりのヘビースモーカーだったのですが、息子さんが生まれてからは禁煙もされていましたし、退院後はさらにご自分でも体のことは気をつけていたことと思います。多作ではないもののいくつかお仕事もされている様子でした。しかし…。

突然の訃報

昨年の年末近くに突然奥さんからお電話いただき、藤井さんの訃報を聞きました。家人がいないときお一人で倒れられたそうです。あまりに突然でした。

2、3年前クラウドファンディングで連載企画を考えているというお話をされていましたから、創作意欲はまだまだおありだったはずなのに…とても残念です。

お葬式にはたくさんの人たちが集まっていて、藤井さんがとても周囲から愛されていた人だったのだなということが改めてわかりました。

「まいど君がゆく」

ところで、藤井さんがここ3年ほど描かれていた作品がこの「まいど君がゆく」です。

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この作品は作業服の通販を行っているまいど屋」さん(埼玉県川口市青木2-12-26)のサイトで月2回のペースで連載されていたものです。

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このたび私今木商事が、藤井さんの奥さまのご推薦もあって、この「まいど君がゆく」のマンガ執筆を引き継ぐことになりました。

80話以上も描かれてきた藤井さんの栄誉を汚すことのないよう誠心誠意務めていきますので、どうかよろしくお願いいたします。

なお私が手がけた最新83話は、実は藤井さんが途中まで描かれていたものです。実に藤井さんらしい熱のこもった原稿だったので、編集の方とも話し合い、私が手を加え完成させていただきました。

近日公開予定ですので、藤井さんと私の合作をぜひご覧くださいませ。

 

最後に、藤井昌浩さん今までありがとうございました。安らかにお眠りください。